口の中に原因がある病巣感染
歯周病や歯の根っこの病気、さらに扁桃腺炎などがあると、思わぬところに二次的に疾患が見られることがあります。慢性病巣が原因で病巣から離れた臓器などに病気が起こるものを病巣感染といいます。その病巣感染を起こしてしまう原因で最も多いのが、口の中の病気です。口の中に病気があることによって離れた場所から疾患が見つかることがあります。
二次的に起こる疾患には、腎炎、皮膚炎、関節炎、などがあります。口の中の菌が出す毒素が腎臓、皮膚、関節に蓄積してアレルギー反応が起こるためと考えられています。
私たちは、何らかのストレスがあると順応して生き延びようとします。細菌も同じようにストレスに順応しようとします。細菌がストレスを感じるとタンパク質が作られます。それらは熱の刺激によって速やかに作られることから、熱ショックタンパク質と呼ばれています。口の中の細菌も、熱ショックタンパク質をつくります。その熱ショックタンパク質が皮膚炎を起こすことがわかってきました。手のひらや足の裏にみられるブツブツの膿胞(のうほう)ができるものは掌蹠膿胞(しょうせきのうほう)症とよばれます。実は、一部の掌蹠膿胞症の原因は、口の中の細菌が作る熱ショックタンパク質によることがわかりました。
掌蹠膿胞症は、歯科用の金属に対してアレルギーがある場合にもみられます。口の中で金属の成分が溶け出して皮膚疾患を起こすことがあります。手足の皮膚炎が、患部の治療で改善が見られないときは、口の中の病気も疑ってみることが大切です。歯に詰めている金属を取り除いたり、歯の根の病気や歯周病を治療することによって、皮膚炎が治癒した例は少なくありません。