鼻と口の粘膜の違い
鼻粘膜の目的は、体外の空気を肺呼吸に都合よく調節することです。
食べ物は咀嚼という運動が必要ですが、鼻は加湿、加温、清浄などの作用を絶えず無意識下で行わなければなりません。
また、鼻腔の温度は、27~37℃くらいになるように調節しなければなりません。
考えてみればかなりの重労働を強いられています。
異物進入を阻止する鼻の粘膜
水を飲む時や飲み込むときは痛くないのに鼻に水が入ると痛いのは、粘膜上皮が違うからです。
口の中や中・下咽頭は重層扁平上皮、鼻や上咽頭は多列円柱上皮です。
この多列円柱上皮は気管支表面にも存在します。
中・下咽頭は扁平上皮ですから外部からの刺激に対して強いのですが、多列円柱上皮は異物を避けなければならないため、浸透圧などの変化に敏感です。
むせたり、痛みが走ったりして体に危機を伝えているのです。
水が入ると浸透圧の関係で鼻粘膜細胞が膨張します。
それが侵害刺激受容体を刺激して痛みを感じます。
逆に生理食塩水と同じ塩分濃度(0.9%)だと細胞の膨張はありませんから、鼻うがいをしても痛くないのです。
コヨリで鼻を刺激したり、太陽に鼻を向けるとくしゃみが出るのは、異物除去を自律神経が反射的に行っているのです。
また、上咽頭の粘膜上皮には、異物除去に特異的なM細胞や白血球への抗原提示を行う樹上細胞が存在し、細菌やウイルスの感染から身体を守っています。
インフルエンザ検査のときに上咽頭から検体を採取するのは、ここを流れる空気の乱流が起こり微粒子が捕捉されるからです。
そのために上咽頭には免疫細胞が多く存在しています。
粘膜に悪影響を与える口呼吸
口呼吸で口唇が乾燥したりすると、分厚くめくれてきたりします。
同様に、乾燥した空気の刺激を受け続けた気管支にある多列円柱状皮は、重層扁平上皮に置き換わってしまいます。
これを「化生」と言います。口呼吸は、組織学的な変化も引き起こしてしまうのです。
鼻、副鼻腔、上咽頭、耳管からの分泌液には、粘稠性と保水性を与えるムチン、糖タンパク、IgAなどの免疫活性物質が含まれていますが、嚥下や自然落下によって粘液層は順次入れかわっていきます。
口呼吸では咽頭粘膜面が乾燥し、疼痛や乾燥感を生じることがあります。