肺機能、運動機能と口呼吸
負のスパイラルを生む口呼吸
気道狭窄や呼吸筋力低下によって、顎を前に突き出す亀のような姿勢をしている場合があります。気道がより広がる姿勢で、楽な呼吸をするためです。実はこのような方に、「姿勢を正して」とアドバイスするのは得策ではありません。本人は酸素を取り込むために必死に喘いでいる結果かもしれないのです。
漏斗胸は、小児期の重度な睡眠時無呼吸症候群(SAS)によって引き起こされると考えられています。舌根が沈下し強い圧での呼吸では、まだ柔らかい胸郭が大きく変形し、「動揺呼吸」(陥没呼吸)と呼ばれる特異な呼吸を呈し、これが原因となることがあります。これはもともとの全身の筋力の弱さ(マルファン症候群やダウン症などといった遺伝的疾患など)が関係してくることもあるので、一概に口呼吸のせいだけとは言えませんが、知っておくとようでしょう。
巻肩は前方偏移した頭部により変わった重心を補正することでも起きますし、座位を保持できない生活様式(ソファに寝転んだり)による筋力低下やスマホの使用時間増加によっても起こります。
さて、児童で比較しても、口呼吸児童は姿勢が悪いのはもちろんのこと、歩行テスト(6分間にどれだけ歩くことができるか)、呼気吸気時の最大圧も有意に悪化します。口呼吸は大量の空気を取り込めますが、肺胞での酸素の取り込みまで改善するわけではありません(吸気中の一酸化窒素が減りますからむしろ悪化します)。運動機能が低下するのは当然の結果かもしれません。
新型コロナウイルス時代になり、幼少期からマスクを装着しっぱなしという小児がこれから増えてくることを考えると、咀嚼、捕食だけでなく姿勢、睡眠時無呼吸症候群の増加に十分注意を払っていかなければなりません。