口から正しく食べることの出来ない高齢者
今ごろ、高齢者を中心に食べ物をうまく飲み込めない人、唾液などが気管へ流れ込んで起こる誤嚥性肺炎で苦しんでいる人が増えてきています。
口から食べることは、生きるために欠かせないことです。もちろん、成長発育などで体をつくるとき、大人になって体の形や機能を維持するときにその基なるものまたエネルギーの源になるのが食べ物です。ましてや病気や怪我をしたとき療養には、より多くの栄養が必要となります。時には鼻から管を通したり胃に穴を開けてかゆ状の食品を入れたりすることがありますが、決して良いことではありません。口から食べてこそ消化吸収がうまくいき、元気に生きることにつながります。
また、食べることは、生涯を通じて大きな楽しみですよね。ところが、おもちをのどに詰まらせて亡くなった老人や誤嚥性肺炎になった高齢者の話は、いつまで経ってもなくなりません。いつまでも健康で毎日を楽しく過ごすために、安全においしく食べていくことを続けてほしいものです。
普通は、噛んですり潰し、食べ物を一かたまりにしてごっくんと飲み込みます。ところが、病気の後遺症や老化などが原因で、水分や食べ物をうまく安全に飲み込めないことがあります。この咀嚼嚥下には、歯や唇、舌を中心に多くの筋肉が複雑に協力して動作を達成しています。きれいな歯並びや噛み合わせがあっても、この過程で神経や筋肉の機能や構造に何らかのトラブルが生じると嚥下がうまくいきません。すると、栄養や水分が取れないのでさまざまな障害が生じます。また、食べ物や唾液が食道でなく気管へ流れ込むことにより、誤嚥性肺炎が起こったり食べ物がのどに詰まり窒息したりすることもよくあります。この原因のほとんどが口の周りの筋肉の筋力低下に起因して起こっています。身体の老化で最も問題になるのが筋力低下によるものです。端的に言うと、歩けなくなる原因が、足腰や体幹の筋力低下だと言えます。その筋力低下が口の周りの筋肉に及ぶと、嚥下・発音・呼吸などに大きく影響を与えているわけです。
脳梗塞の後遺症などで筋肉がうまく動かないことによって生じている嚥下障害に対しては、唇を中心とした口周囲の筋肉に対してリハビリを行うことにより、徐々に改善された方も多くいます。
口やのどの粘膜が乾いても、咀嚼嚥下に障害が出ます。乾いた粘膜では食べ物などが非常にくっつきやすくなります。おもちをのどに詰まらせるのは、喉の粘膜が乾いているからです。それだけではありません。口の粘膜が乾くと、食事や歯磨きなどで出来た小さな傷が大きくなりやすく炎症も強くなります。さらに粘膜は抵抗力が落ちるので、汚れや雑菌、ウイルスなどが粘膜表面によくたまり、体内へ侵入しやすくなります。
のどに詰まらせやすいおもちでも、バターやジャムを塗れば飲み込みやすくなるでしょう。しかし、のどに詰まるのを防ぐためには、普段から口を閉じて鼻で息をしてのどを乾燥させないことが大切です。肺へつながる気管は食べ物が胃へ流れる食道より前にありますから、うつ伏せや横向きで寝るのは唾液や粘液が気管へ流れ込みやすいので好ましくないでしょう
口の周りの筋力低下が、誤嚥などを招くことは、すでにお話しましたが、その筋力低下につながる発端は、歯を失くすことだと言われています。高齢者になっても歯が抜けないようにすることが一番の対策と言えます。また、私たち歯科医師も出来るだけ患者さんの歯を抜かず治療して抜く時期を先送りすることが大切です。
もちろん、歯が抜けたままや穴があいたまま、歯がぐらぐらしたままで放置することがないよう、口の中の異常に気づいたら出来るだけ早く歯科医師のご相談ください。
この記事のお問合せ先:大阪市阿倍野区西田辺のいえさき歯科
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