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お年寄りはなぜ肺炎になりやすいのでしょうか?

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お年寄りは肺炎になりやすい

日本は、少子高齢化がどんどん進んでいます。高齢者の割合がますます高くなり、自立が困難なお年寄りも増えてきています。そのような人たちへの介護は、社会全体で責任をもって実施しようということで、介護保険制度も出来上がりました。

介護を必要とする人たちや高齢者の直接の死因で最も多いのが、肺炎です。その原因菌が口の中に潜伏しています。

私たちは、寝ている時でもごくんと唾液などを飲み込んでいます。すなわち嚥下(えんげ)反射が起きています。口の中の細菌は食道を通って胃の中に入っていった場合、胃液などによって殺されます。ところが、高齢になるにつれ、嚥下反射は低下します。そうすると知らず知らずのうちに鼻、喉、口の中の細菌が食道ではなく気管へ流れこむようになります。元気な人は、そのような場合、咳やムセによって排除することができますが、お年寄りは簡単に咳反射がおこりません。また、気道の粘膜にはたくさんの細かい毛が生えていて、唾液や細菌が気管支に流れ込まないようほうきのような役割をして排除しています。しかし、その毛の本数と運動は、年齢とともに少なくなってしまいます。そのため、知らないうちに唾液や細菌が気管支や肺に入り込んでしまいます。そのことを誤嚥(ごえん)といいます。したがって、高齢者の肺炎の多くは、誤嚥によって起こる誤嚥性肺炎といえます。

口の中の細菌が気管支から入り込んでいくと、元気な人では白血球が出てきて細菌を食べて殺してくれます。それらの白血球は、私たちの体を守るミクロの戦士といえる肺胞マクロファージとよばれるものです。残念ながら、マクロファージなどの戦士たちも高齢化とともに弱くなってしまいます。流れこむ細菌が多すぎたり、食物あるいは胃液が逆流して気道を通って肺に入り込んだ場合には、防御作用を発揮することができなくなって、すぐに重篤な肺炎となり命を奪われることになってしまいます。

老人の肺炎の予防に最も大切なことは、脳血管障害などの疾患やねた寝たきりなどにならないことです。しかしながら、全ての人たちが健康な老後をむかえることができるわけではありません。介護が必要になった場合には、間違って食物が気道にいかないように、介護者がきちんと食べさせてあげることが大切です。きちんと食べさせることについては、歯科医療担当者を含め介護にあたる人たちのなかによく知っている方がおられます。その方たちから指導を受けることが肝心です。さらに、口の中の原因菌を少なくしておくことも大切です。たとえ総入れ歯が入っていたとしても寝る前に口の中をきれいにすることは、お年寄りの肺炎予防の決め手となるものです。

集中治療室の患者さんには口腔清掃が大切です

大きな手術を受けたり、事故にあったりした時、あるいは重篤な病気になった際は集中的な治療が必要となり、集中治療室すなわちICUという部屋に入ります。ICUで治療を受ける患者は、知らないうちに口の中の細菌を気管支や肺に持ち込んでしまいます。唾液に混入した細菌が胃に持ち込まれず、誤嚥(ごえん)がおきてしまいます。チューブを気管に入れる患者では、特に口の中の細菌が肺に入り込むリスクが高くなってしまいます。そのようなことが原因の肺炎は重篤になり、入院期間がどんどんのびてしまい、命をうばわれることも少なくありません。

集中治療室の患者さんには、消毒液にひたしたガーゼやスポンジで歯や舌さらには粘膜をふきとり、細菌の数を減らしておくことが大切になります。

今では、多くの病院で口腔ケアに熱心に取り組む病院が、増えました。歯科衛生士も病院ごとに常駐しているようになって来ています。