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オーラルフレイル対策

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オーラルフレイルの兆しに早く気づく

オーラルフレイル対策にもっとも大切なのは、「その兆しにできるだけ早く気づく」ことです。早めに対処すればするほど、健康な状態へと戻るスピードも速くなります。歯科は、「歯が痛い」「詰め物がとれた」など、明らかな不調があるときにしか行かない人が多いのではないでしょうか。しかし、お口の機能はとても複雑です。

たとえば歯科へ行ったときに、うまくうがいができない、うがいの後の吐き出しがうまくいかないなどの経験があるなら、それはオーラルフレイルの兆しかもしれません。また、機械で歯を削るときや、超音波で水を出しながら歯石をとったりするメインテナンスのときに、むせ込みやすい人もいるでしょう。実はこうした症状は、舌の筋肉が衰えていることや呼吸や飲み込みのコントロールがうまくできていないことが原因です。早期の対策で改善できる症状です。同じように、普段の生活でも、歯以外のお口の機能について意識すれば、こうした症状も改善でき、オーラルフレイルの進行を防げるのです。最近、オーラルフレイルは、歯科衛生士国家試験の出題基準にも入るほど注目されています。これまでは「歳のせいですね」と言われていた「最近飲み込みにくい」「口が渇く」といった症状が、プロによってきちんとチェックされ、改善できるようになったのです。

 

予防的活動で味覚まで変わる

健康な高齢者20人ずつを対象に、2週間に1度、お口の健康教室を行った場合と、特に何もしない場合の介入研究を行った例では、前者は唾液の量が多くなったり、「オーラル・ディアドコキネシス(唇や舌の口腔機能の巧みさや速度で評価する方法)」の回数が増えたりといった効果がありました。3カ月の追跡調査で、「以前より味を感じやすくなった」という味覚に対する効果も表れました。ただし、これは継続しなければすぐに元に戻ってしまいます。

継続のためのモチベーションは様々ですが、たとえば数値が向上したり、ほかの人と数値を競争すると、一生懸命に取り組める人もいますし、数値にはさほどこだわらず、孫とカラオケに行きたいとか、友達とご飯を食べに行きたいといった、生活の中で楽しむことをモチベーションにしている方もいます。詩吟やスポーツ吹き矢など、お口周りをよく使う趣味を持つ人は、オーラルフレイルになりにくいようです。普段から口の筋肉をよく使い、鍛えている人は健康寿命が長くなる傾向があります。お口の機能の衰えは、人生の楽しさを半減させてしまいますから、大切にしていることや趣味などを目標にして、無理なく継続していける仕組みを作りましょう。

 

むせを防ぐ「パタカラ体操」

お口の機能を鍛えるためにおすすめなのは「パタカラ体操」です。これは、「オーラル・ディアドコキネシス」という、唇や舌の滑舌について評価する方法を取り入れた体操です。オーラルフレイルのチェックでは、「パ」「タ」「カ」をそれぞれ5秒ずつ、できるだけ早く、はっきりと発音して、何回言えたかを数えます。

パは、唇の動きの評価です。しっかりと噛んで食べるときに唇の筋力は必要です。タは、噛んだものを飲み込むときに活躍する舌の先端部分が、きちんと動いているかの評価です。カは、噛んだものを喉の奥へ送り込むときに使う舌の根元部分の筋力の評価です。それぞれの発音でどこの筋肉を使っているかをきちんと意識すると、自分はどこの筋力が落ちているかを認識できます。パタカラ体操は、この「パ、タ、カ」に、弾く音である「ラ」を加えた体操です。オーラル・ディアドコキネシスで6回未満でも、毎日のパタカラ体操を習慣にすれば、お口の機能が改善していくでしょう。お友達同士で競い合うのも刺激になります。

 

食事前に行う唾液腺マッサージ

唾液は、食べ物をきちんと飲み込むために必要不可欠なものです。お口の中を洗浄したり、異物を流したりする効果もあります。唾液は、唾液腺という巨大な分泌腺から分泌されます。ところが、加齢とともに唾液が出にくくなり、お口の中が渇きやすくなります。加齢による自然な衰えだけではなく、噛む回数の減少や味覚が鈍感になることも要因となります。また、ストレス過多や、緊張などで交感神経が活発なときにも出にくくなります。

さらに、服用する薬の副作用の場合もあります。高血圧症や骨粗しょう症の薬、睡眠導入剤、精神安定剤(抗不安薬)、抗うつ剤、胃腸薬などはお口が渇きやすくなります。唾液が出にくいと感じたら、唾液腺マッサージをしてみましょう。唾液腺は顔の周りの3か所にあります。耳たぶのやや前方で上の奥歯あたりにある耳下腺、あごのとがった部分の内側の真ん中あたり、ちょうど舌の付け根の部分にある舌下腺、あごの骨の柔らかい部分にある顎下腺です。食事の前に水分を多めにとってから、これらの唾液腺をマッサージするのです。唾液が多く分泌されれば、その後の食事もおいしく食べることができます。唾液腺マッサージは食事の前の習慣にして、継続して行うことが大切です。

耳下腺マッサージ:両頬に親指以外の4本の指をそろえてあて、奥歯の周囲をグルグル回転させてもみほぐす。

舌下腺マッサージ:親指の腹を使い、あごの下側を軽く押すようにマッサージする。

顎下腺マッサージ:耳の下からあごにかけて指先で下からやわらかく押し上げていく。

唾液腺マッサージと並行して、普段の生活の中でも、よく噛み、よく話すなど、お口をしっかり使い、自然と唾液が出るように心がけてください。なお、シェーグレン症候群という唾液が出にくくなる病気もありますので、ひどい場合や改善しない場合は医師の診察と治療が必要です。また、子どもは唾液分泌量が多いものですが、鼻炎や口呼吸によって口が渇く場合があります。そうした訴えがある場合は医師や歯科医師の診察を受けましょう。

 

定期的に歯科検診を受けましょう

歯科検診をおろそかにし40歳代から放置されてきたお口の中は、驚くほど環境が悪化しているといいます。40~50歳代からオーラルフレイルが始まるともいわれており、その時になって悔やむ人が非常に多いのです。

高齢者の場合も歯科検診は重要です。何年も前に作った義歯が合わなくなっているのに使い続けている人も多いですし、食べこぼしや噛みにくさを感じているのに歳のせいだと放置している人も見受けられます。ちょっとした不調でわざわざ歯科に行くのはおっくうだと思いがちですが、定期的に歯科に行く習慣があればついでに相談ができるのです。お口の健康を最重要事項と捉え、自分で自分のお口を守りましょう。