お知らせ

さあ、予防歯科を実践しよう!

お知らせ予防歯周病について虫歯

1)予防歯科システム

虫歯と歯周病の原因は、大昔は歯石、最近まではプラーク(細菌の塊)またバイオフィルムと言われてきました。

そしてこの15年くらいの間に色々な研究が進み、細菌の量ではなく質、つまり細菌叢(バイキンの集まり)の状況によって引き起こされることが分かってきたのです。

そのキーワードが、マイクロバイアルシフトなのです。

マイクロバイアルシフトとは
通常お口の中にいる菌は700種類いると言われ、大まかに善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3つに分類されています。
その比率は、おおよそ善玉菌:悪玉菌:日和見菌=2:1:7となっています。
善玉菌と悪玉菌比率が変化することで、日和見菌は善玉菌の比率が増えると善玉菌に傾き、悪玉菌が増えると、悪玉菌に傾くことが解って来ました。

歯磨きができなかったり、食べてばかりでお口の中が酸性に傾いていたり悪玉菌にとって居心地の良い環境になってしまうと、日和見菌たちが悪玉菌の味方になってしまうのです。
逆に、口の中が清潔に保たれ、ばい菌の餌となる糖分が少ない環境になると善玉菌が優勢になり日和見菌たちは善玉菌のような顔になるのです。

これらのばい菌の変動をマイクロバイアルシフトといいます。

今まで保たれていた良い菌のバランスが、何らかのの原因で崩れ、細菌叢の良い均衡が壊れてしまうことを言うのです。

さて、マイクロバイアルシフトを引き起こさないためにはどうしたらいいのでしょうか。
悪玉菌にとって住みやすい環境にしないことが一番です!

①甘いものを控えること②コーラや炭酸などの酸性の飲み物を出来るだけ飲まないこと③毎日の歯磨きをしっかり行うこと④歯医者さんでのクリーニングを定期的に受けること⑤ 十分な栄養を摂り、正しい睡眠で体調を整えておくこと⑥歯茎から出血がない状態を保つこと

レッドコンプレックスといわれる最強の悪玉菌は血液中のヘモグロビンの鉄分を栄養とし繁殖する性質があるため、出血を放置していると、歯周病が進行していきます。
最近は、出血があることを一番の指標としており、痛みがなくても何らかの病気のサイン出ているものと解釈しています。
歯茎からの出血に気づいたら歯科医院への受診をお勧めいたします。

マイクロバイアルシフトは、自分では気づけないうちに起こることもよくありますので、お口の中のわずかな変化を感じたり、違和感を感じたら、放置せずに歯医者さんにお口の中を確認してもらいましょう。

う蝕と歯周病の最新病因論であるマイクロバイアルシフトについてご理解いただけましたか?あとは マイクロバイアルシフト制圧のため、予防を実践することが重要です。プロフェッショナルケア(歯科医院での歯のクリーニング)とセルフケア(毎日の歯磨きやケア)を両輪として、われわれ歯科医院スタッフと患者さんとの協同作業が始まります。患者さんの発症リスクは個人差が大きいです。これからの歯の病気の予防は患者さんのリスクに合わせてオーダーメイドで臨むことが重要です。そのために、リスク診断を行い、リスクに合ったプロフェッショナルケア・セルフケア指導・来院間隔を設定した予防歯科システム作りが必要です。

①ライフステージに対応したオーダーメイドアプローチ

患者さんのライフステージや年齢によって予防の目的は変わります。①口腔機能の育成(幼児期)②エナメル質う蝕予防(小児期~)③歯周病予防(青年期~20歳以上)④根面う蝕・オーラルフレイル予防(高齢期)大きく4つに分けて患者さんの年齢と口腔状態に考慮して、どんな病気を防ぎ、患者さんのお口守るのかを明確にします。

②う蝕リスク診断

う蝕リスクを判定するために多くの歯科メーカーから虫歯予防の検査キットが提供されています。これらのキットを用いることでリスク因子の評価を行うことができます。主には唾液検査機器でう蝕リスクを判定するようになっています。

③歯周病リスク診断

歯周病リスクの判定には様々な歯周病細菌検査があります。歯肉縁下(歯茎の中)の細菌が作り出すバイオフィルムと呼ばれるネバネバした水垢状の膜の中に住む細菌の病原性の違いをピラミッドにたとえられています。いわゆる細菌同士がヒエラルキーを形作っています。病原性がほとんどない細菌種はピラミッドの底辺にいて、病原性の高い細菌種はピラミッドの上にいます。もっとも病原性の高い極悪菌はレッドコンプレックスと呼ばれてます。レッドコンプレックスと呼ばれる細菌軍が病原性の高いバイオフィルムを形成します。特にpg菌は非常に高い病原性もつ菌です。

④プロフェッショナルケア

う蝕予防のプロフェショナルケアはリスクに応じて異なります。防御因子を増やすとともに脱灰因子を減らします。フッ化物の活用は必須です。歯周病予防はバイオフィルムを低病原性に維持することです。もっとも大事なことはPMTCやスケーリング時の歯肉出血を見逃さないことです。出血を止めるにはPMTCと超音波スケーリングだけでは不十分です。キュレットを使った上手なSRPを行うことが必要です。適切なSRPを行っていないと、歯科定期受診を欠かしたことがなくても重度歯周病に陥る可能性があります。

⑤定期な口腔のチェックと健康管理

疾患リスクに応じた管理間隔を設定します。口腔状態の今と過去を比較することは大事です。毎回、データ記録を残し、前回と比較できる予防システムを整えます。初期う蝕や二次う蝕は見落としやすいので、カリエスリスクが高い人はエックス線写真撮影を定期的に行ったほうがよいでしょう。特に高齢者の根面う蝕には注意が必要です。根面う蝕の進行はとても早く、3カ月前は何ともなかったところに新たな虫歯が見つかることも多々あります。いずれにしても歯周病予防には歯周ポケットからの出血を見逃さないことがもっとも大事です。

 

2)予防歯科にもっとも必要なものは何でしょう。

院長先生の熱意

「防ぎ・守る」は歯科衛生士の仕事、歯科医師の仕事は「削る・詰める」であると役割分担をしてしまい、予防歯科を歯科衛生士に丸投げする歯科医院には予防歯科は根付きません。予防歯科診療は歯科医師の熱意にスタッフが引っ張られて実現します。どこの会社でも、上司が熱意を示さないことを一生懸命にこなす部下はいません。

3)予防歯科に近道はない

歯磨剤、薬液、プロバイオティクスに関して、どれが一番よいですは?質問される人は少なくありません。「歯磨剤や薬液に触れた細菌たちは立ちどころに苦しみ、のたうちまわりながら死んでいく(殺虫剤をかけられたゴキブリのように)」と思っています。しかし、バイオフィルム細菌はそんなにやわではありません。うがい、塗る、食べるだけで「むっちゃ効く~、これで治る~」なんてものはありません。予防歯科に近道はないのです。

 

4)バイオフィルムの病原性管理

バイオフィルムと歯・歯周組織のバランスが崩壊しないように、長期にわたる管理を行わなければなりません。予防歯科の目的は歯と歯周組織とバイオフィルムの病原性の均衡を維持することです。お兄ちゃんと妹、お父さん、お母さん、おじいちゃんおばあちゃん、一家そろって歯科医院を受診し、予防歯科クリーニングを受けるのを楽しんでくれる予防家族がこれからも増え続けることを願ってやみません。