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たかが歯磨き、されど歯磨きーこんな歯磨きにご用心

お知らせメインテナンスケア

最近では、むし歯や歯周病の予防に歯磨きばかりが聞こえてきます。食事をすると、食物の中の砂糖やデンプンなどの炭水化物が分解されて糖類ができます。そして、それを材料として、口の中にいる細菌が体に迷惑をかける酸や毒素、環境を作り出します。酸や毒素が長時間1カ所にたまっていると、障害が出てくるのです。歯に作用するとむし歯に、歯ぐきに作用すると歯肉炎(歯ぐきが腫れる病気の一種)となります。食後すぐに不要な食べ物を口の中から取り除くことは、むし歯や歯周病予防の観点から原因を除去することで、有効な方法の一つです。

しかし、本来、人の体には自前の抵抗力があります。口では、歯や歯ぐき、粘膜を守るために、唾液が大量に分泌されています。口の中で産生された酸や毒素は、唇やほおの粘膜でこすられたり唾液で洗われたりして、歯や粘膜の表面から取り除かれています。歯と歯の間に食べかすなどがたまっていると、唾液の流れが悪くなり、歯と歯ぐきの抵抗力が低下してしまいます。とくに、高齢者では歯ぐきが痩せて歯と歯の間など食べ物がたまる場所が増えてくること、唾液の分泌量が減ってくること、唾液の性能が低下することなど、体の抵抗能力が低下してくるので注意が必要です。高齢者に限らず、薬の大半は交感神経の緊張を高め唾液の分泌を抑制する傾向があるので、口の中がよく乾く人は主治医の先生と早めに相談をしましょう。冷たい飲み物や食べ物も交感神経を優位にするので、唾液の量を減らしそうです。

歯磨きをすると、唾液がたくさん出てきます。唾液を多く出すこと、出す練習をすることは健康に有効です。それ以外に歯磨きの効用はたくさんあります。

歯を磨くと口の中がさわやかになり目が覚めますね。眠いときに歯を磨くと目が覚めませんか。つまり、朝の歯磨きには目覚まし効果があるのでしょう。副交感神経が優位な睡眠状態から交感神経が優位な活動状態へ早く移行するのに有効ではありませんか。集中力を高める効果にもつながりそうですね。アメリカ大リーグでは、グラウンドに出る前に歯を磨く選手もいるようです。ある小学校で行った実験では、歯磨きをした後に児童の計算能力が上がっていました。

そして、食後やお出かけ前に歯を磨くのはどうでしょうか。人と会うときに前歯にねぎが挟まっていると、みっともないですね。できる商談も成立しないかもしれません。日ごろのエチケットやマナーとしても役立ちます。体を清めることと口を綺麗にすることに共通点もありそうです。

歯磨き習慣は、大人になってからではなかなか定着しにくいものです。幼児期からやさしくていねいな歯磨きを心がけておきましょう。決して力ずくで汚れだけを取ろうと思わないようにしてください。毎日何気なくしている歯磨きですが、やり方を間違うと、とんでもないことが起こります。

歯が歯ぐきのそばで、皿状やくさび状にすり減っていませんか。年を取ったり歯に横向きの無理な力が長期的にかかったりすると、歯を支えている骨が溶け、歯の根の部分が露出してきます。歯の根は、噛む部分のように硬いエナメル質で覆われていないため、比較的容易に歯質がすり減ります。ゴシゴシ磨きのように力任せの長いストロークでの歯磨きは、毛先が早く動いて歯の膨らんだ部分が強くこすられます。これでは、汚れのたまりやすい歯と歯の間のくぼみに毛先が届かないだけでなく、歯がすり減る危険性が高くなります。冷たいものがしみる、歯ブラシの毛先が当たるとチクっとするなど、「知覚過敏」になることもあります。くさび状にすり減るときは、噛み合わせなど歯にかかる無理な力が原因になっていることがほとんどです。

食事をすると口の中が酸性になり、歯の表面が溶け一時的に柔らかくなります。このときの歯磨きには、より注意が必要です。果汁や健康酢、炭酸飲料など酸性の飲み物も同様です。溶けた歯は健康な唾液により半時間ほどで再石灰化し硬さも戻ります。歯のすり減りが目立つなら、食後すぐの歯磨きや力任せのゴシゴシ磨き・シャカシャカ磨きを避け、やさしく小さくを心がけましょう。

歯は地面に植わった杭のように骨によって支えられています。これは縦方向の力には強いが、横からの力には大変弱い構造です。十グラム程度の小さな力でも、持続的あるいは反復的に横方向に作用すると、歯は押された方向に動きます。同時に歯が伸びて、見える部分が長くなります。歯並びの壊れは審美的だけでなく、機能的な障害になります。年を取って前歯にすき間ができて外に開いて来る方を多く見かけますが、外から押さえる唇の力が緩み、内側から外へ押す力が勝るからです。前歯の裏側を磨くときに歯ブラシで前方へ引っ張るのは同類の力となります。歯ブラシの取っ手に近い角の毛先を使い、やさしく小さくを心がけましょう。

毛先で強くこすったりプラスチック部分が歯ぐきに当たったりしたときに、すり傷や口内炎が生じます。口の中は粘膜で、皮膚のように強くありません。口呼吸習慣やポカンと開いた口など、口の中が乾いた状態が続くと粘膜の表面が乾燥し、小さな傷への抵抗力が低下します。

口臭の原因として、舌の汚れを指摘されることがあります。そのときに歯ブラシで力任せにこすると舌の表面が傷つき、ヒリヒリしたり味覚に障害が出たりすることもあるようです。専用の道具を使ったり、やさしくこすったりするように心がけましょう。粘膜は表面が濡れていてこそ、汚れが洗い流されます。少しでも多く噛むことや口の中の乾燥を防ぐことは、舌や粘膜の汚れを減らすために必要です。

いくら頑張っても口の中に汚れは残ります。唾液は歯を溶かす酸を中和したりはぐきを腫らす毒素を分解したり、汚れを洗い流したりして病気の予防や健康維持に役立っています。歯磨きなど口を刺激すると唾液がたくさん出てきます。逆に不規則な生活をしたりストレスを受けたり薬を服用したりしていると、唾液の量が減ってきてしまいます。歯ぐきの際をていねいに磨くだけではなく、口の乾燥にも気をつけましょう。

成人期以降では、歯と歯の間のすき間が広くなってくるので、そこに毛先をきちんと入れてかき混ぜるような小さな振動がおすすめです。歯の表面の少しでも多くに毛先が当たるように心がけてください。歯磨きには、目覚ましやお出かけ前のエチケット、緊張感を高めるなどの効用もあります。正しい方法で口や心身の健康に役立ててください。