具合の悪い入れ歯を諦めていませんか
「入れ歯」をつくったのですが、違和感がずっと取れず、しっくりきません。つくって入れてくれた歯医者は「そのうち慣れる」というのですが大丈夫でしょうか?と質問を受けることがあります。
長い期間、違和感を我慢したというのは、ほんとうにお気の毒です。
入れ歯に違和感あるいは異物感があるというのは、患者さんの口に入れ歯がマッチしていない証拠です。そのことを医師にしっかり訴え、改善してもらいましょう。
我慢するとか、「こんなものだろう」とあきらめるひつようなしです。入れ歯に関する限り、我慢は"百害あって一利なし"。ブリッジや部分入れ歯にも当てはまることですが、具合の悪さを我慢するほど、他の健康な歯や歯ぐき、歯の根、歯を支える骨(歯槽骨)にまでしいては全身まで回復不能のダメージを与えてしまいます。
このかたの場合、違和感を訴えても、取り合ってもらえなかったとの訴えです。もし事実とすれば、「そんな無責任の歯科医がいるのか」と驚かざるを得ません。
歯科医の立場では、入れ歯の成功不成功は、患者さんの満足度によって決まると私は考えています。どんなに立派な入れ歯も、患者さんがそれに満足し、「具合がよい」と納得するものでなければ、その治療は失敗です。
ですから、私であればは患者さんの訴えに可能な限り耳を傾けます。
・入れ歯づくりの過程
・完成後の調整期間
・治療終了後に一定期間経過後に行うリコール
どの段階でも患者さんの"使い心地"を聞き出し、その人にふさわしい入れ歯をつくりあげるのが、いわば歯科医の腕の見せどころです。
つまり、患者さんの訴えが良い入れ歯をつくるのです。
むろん歯科医は持てる技術のすべてを駆使し、最初からピッタリ合った入れ歯をつくろうとしますが、"使い心地"まではわかりません。使い心地の良し悪しについての情報を、歯科医に伝えられるのは患者さんだけです。
不都合なところがあれば、遠慮なく訴えて頂きたいものです。
入れ歯の違和感は、どうして出るのでしょう。
入れ歯の違和感を訴えても、「そのうち慣れますよ」と歯科医にいわれるケースが意外に多いようです。そのうちとは、1か月くらいの期間と私は、考えています。合っている入れ歯であれば、約一か月あれば、身体はその入れ歯を受けいれ、適応することで違和感がなくなります。それ以上の期間となると話は違ってきます。患者さんも「そのうち慣れるだろう」「入れ歯はこんなものだ」と考えておられるところもあるでしょうが、長期間にわたり必要のない我慢をしてしまうのは決してよくありません。ただ、高齢な方ほど適応に時間がかかる傾向があることは否めません。
確かに自分の歯ではない、人工物が口の中に入るわけですから、はじめからまったく違和感がないという事はないでしょう。しかしその人に合う入れ歯であれば、必ずピタッとおさまって、少しずつ違和感は消えていくものです。
違和感が強かったり、長く残るなら、何かの原因があるのです。
「具合の悪い入れ歯」は、大きく分けると二つに分類できます。
①噛み合わせが悪い
②口にマッチせず、安定性が悪い
先の訴えのケースは、①の噛み合わせが原因になっているようです。
簡単に説明しますと、人の歯はものを食べたり噛んだりするとき、通常は全ての歯にまんべんなく噛む力がかかるようになっています。しかし噛み合わせの悪い歯があると、そこへより大きな圧力が加わるようになります。
一本だけ、ほかよりも長い歯があればどうなるかを想像してみると、わかりやすいでしょう。その長い歯と、向かい合う歯に無理な力が加わりますね。
したがって、入れ歯づくりで私たちが最新の注意を払うのが、この噛みあわせなのです。わずかなズレでも、患者さんは大きな違和感を覚えます。かなりの微妙な調整が必要になります。
いままで使っていた入れ歯の具合が悪いといって来院する患者さんの入れ歯を拝見すると、この調整が充分でないケースが、目立ちます。
調整が荒っぽかったり、ときには「これで調整したのか」と疑いたくなるような入れ歯があって、びっくりしてしまうのです。
今回悩みを露吐された患者さんは、歯ぐきの痛みを訴えています。おそらく噛みあわせが原因でしょう。噛みあわせが悪いために入れ歯が噛むたびにずれ、歯ぐきの粘膜をこすり、傷つけてしまったと考えられます。
違和感・異物感のおもな原因には次のようなものがあります。
・噛みあわせの調整が充分でない
・咬合高径(上下の噛み合う位置)が高すぎる
・義歯床(入れ歯を安定させる部分)が大きすぎるか厚すぎる
・人工歯がすり減っている
・顎関節に何らかの障害がある(音がする、痛みがある、動きが悪いなど)
我慢していてそのうち慣れることはありません。
悪い噛みあわせを「咬合不調和」と呼びます。一年間も違和感を我慢したというこの患者さんの入れ歯は、かなりひどい不調和があったはずです。
というのも噛みあわせの悪さは、小さなものであればその歯科医の言う通り、次第に慣れて、そのうち違和感をおぼえなくなるからです。
私たちが一番心配するのは、実はその慣れです。
慣れによって違和感は消えても、噛み合わせが改善するわけではありません。不正な嚙み合わせはそのままで、それをカバーしながら食べることに慣れただけ。悪い状態に慣らされてしまったという、むしろ危険な状態です。
違和感が消えたのを喜んではいられません。もし不調がわずかでもあれば、密かにダメージが口の中に広がっているかもしれないのです。
入れ歯に限らず、健康な歯も噛みあわせが悪いと咀嚼力がアンバランスになり、歯や歯ぐきを傷つけ、やがて顎までダメージを与えてしまいます。
顎の骨が溶けて歯がグラつき、ついには抜けてしまう歯周病は、かつて歯槽膿漏と呼ばれていましたが、その悪化の原因のひとつも噛みあわせです。
また、噛みあわせの影響は、全身の筋肉・骨格にも現れます。頭痛や肩こり、顎関節症、ひざの痛みや腰痛まで引き起こすことがありますから、小さな違和感といえどおろそかにはできません。
つまり、”慣れる”と”合う”はまったく違うものなのです。
違和感・異物感はこうして解消する
みなさんがいま入れている入れ歯には違和感・異物感がありますか。
あると感じておられるならば、それはたいへんです。すぐに歯科医に相談してください。
私たちがまず行うのは、噛みあわせをよくする「咬合調整」です。
皆さんも治療中に経験していると思いますが、色紙を噛んで歯に付着した色の状態から歯にかかる力のバランスを調べ、噛みあわせを調整します。
原始的な方法のようですが、この咬合調整を念入りに行うことで、上下の歯がしっくり噛み合う理想的な咬合がつくられるのです。
入れ歯の人工歯がすり減っているときは、あまりひどくない場合なら、そこに樹脂を足すなど簡単な処置だけで改善することができます。咬合高径(上下の歯の噛み合う位置)が高すぎる場合は、少々やっかいです。基本的なデザインミスですから、もう一度作り直すこともあるでしょう。
たいていの違和感は、咬合調整の段階でなくなります。それでも違和感・異物感があるようなら、歯ぐきの代わりに人工歯を乗せているピンク色をした床と呼ばれる部分(義歯床)が、患者さん歯茎の形に適していないのかもしれません。
その場合は、義歯のピンク色の内面の樹脂部分(アクリリック・レジン)を削り、小さくする処置を行います。しかしなかには敏感な患者さんがいて、床を小さくしても、なかなか口に馴染まないケースがあります。以前は、そうした異物感をなくすことは非常に困難でしたので、それこそ我慢するしかなかったのですが、技術の進歩によって、いまは微妙な異物感でも解消できます。
・上顎の入れ歯なら、口蓋を覆わない無口蓋義歯に変える
・軽く薄く、生体への親和性にすぐれた金属の床を用いる
・人工歯根を埋め込む(インプラント)
など技術を駆使して問題を解決できるようになりました。
入れ歯にお困りの方は、いつでもご相談に乗りますよ。
この記事のお問合せ先:阿倍野区西田辺のいえさき歯科大阪
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