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噛む力が弱くなるとこんな害が現れる

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「歯がなくなったら、反対側で噛めばいい」

そんなこと考えていませんか?

ちょっと待ってください!その考え方は、危険ですよ。

人間の歯は28本そろい、上下左右の噛み合わせがピッタリ一致しているときに、充分働けるようにできています。その歯がなくなれば、たとえ1本でも噛む力が衰えます。反対側の歯だけで、その衰えをカバーするのは不可能です。

まして何本もなくなってしまったら、咀嚼効率はがくっと落ちます。ほとんど噛めない状態になるといっていいでしょう。噛めていると思うのは、その弱った状態になれただけで、じつは錯覚!残りの歯もたいへんな無理を強いられているのです。

それでは、噛む力が低下すると、どんな悪影響がでてくるのでしょうか。

 

●食べる楽しみが減る

ビールを飲みながら、するめを噛みしめるのが大好きだったHさん(70歳)が、その楽しみをあきらめたのは、かれこれ10年ほど前です。

最初は、歯のすき間にスジが挟まる程度でしたが、そのうち噛んだあと歯がジンジンするようになったり、ついにまったく食べられなくなりました。

むし歯や歯周病で、1本また1本と歯が抜けはじめます。そのたびに食べられる好物が減っていきました。11本欠損で来院したときは、タコやアワビなど硬くて弾力性のものはもちろん、ステーキやカツも口にできない状態でした。

「大きなステーキにかぶりつく夢をよくみるんです」

その夢を再びに実現にしたいというNさんが選んだのは、保険適用のプラスチックの入れ歯でなく、硬い食べ物でも難なく嚙みきれるメタルプレートと呼ばれている金属の入れ歯でした。ここで紹介したいのは、入れ歯によって噛む力を取り戻したNさんの言葉です。

「やっぱり好きなものを食べないと、あきませんわ。何でも食べられるようになって、生きるエネルギーがわいてきた気がします。」

Nさんが食い倒れの街大阪の人だから、そう感じるだけではないでしょう。食べることは、私たちにとって生きる楽しみのひとつです。

人間の最大の欲望は食欲ですから、食べることで人は大きな快感と満足を得ます。お腹だけでなく、心も満たされるのです。家族のだんらんが、みんなで囲むテーブルにあるのも、食べる喜びが気持ちを和やかにし、それが会話をはずませたり、家族への優しさ、思いやりを引き出すからです。

噛む力が弱くなるというのは、食べる喜びを奪われることです。歯が悪くなってから、どれだけの食べ物をあきらめてきたかを思い出してください。同じテーブルについていても、周りの人と同じ食べ物ではなく、自分一人だけ柔らかい特別食では心はずみません。

噛む力を高め、食べる喜びをもう一度、取り戻すのが入れ歯です。

歯がないから、仕方なく入れ歯にするのではありません。そういうマイナス思考はストレスのもとになるだけ。楽しみや喜びを取り戻し、人生をより豊かにするための入れ歯と、プラス思考で考えましょう。

 

●栄養がかたより成人病になりやすい

噛む力が衰えると食べられる食品の種類が限られてきます。好きなものが食べられなくなるだけでなく、柔らかいものばかり食べているうちにしいては栄養まで偏ってくるのです。

ご存知のように生活習慣病の予防の決め手は、偏りのない、バランスのとれた栄養です。ガン予防でも、1日30種類以上の食品をとることが大切といわれています。噛む力が衰えると、そういうバラエティーのある食事が難しくなってきます。

まず、肉などのスジの多いもの、硬いものが食べられません。繊維の多い野菜も食べにくくなります。そのぶん柔らかな食べ物や流動食を余計に食べる。このバランスの偏りが、いろいろな生活習慣病の危険性を高めてしまうのです。

お年寄りの歯の状態が健康にどう影響するかを調べた調査結果がありますが、自分の歯がなく、入れ歯も使っていないグループでは、寝たきり老人が非常に多く、歯がたくさん残っている人に比べ健康な人は少ないことがわかります。やわらかい食べ物か流動食しかとっていない人が大半でした。自分の歯も入れ歯もなければ、当然そうなります。食べるものが極端に限られているのです。

一方、自分の歯で噛めたり、入れ歯を使っている、つまり噛む力の強いグループでは寝たきりが少なく、良好な健康状態のお年寄りが多いのです。しっかり噛んで、バランスよく栄養をとることが、健康維持にいかに大切であるかがわかります。

 

●血管が老化しやすい

たとえば、先に出たHさんはかなり早い時期にイカやアワビを諦めていますが、イカやアワビなどの貝類は、コレステロールを減らす物質が含まれています。それらを食べられないと、生活習慣病のもとであるコレステロールが増えやすくなります。

さらに悪いことに奥歯がない人はゴボウやニンジンなどの野菜を敬遠しがちです。野菜には豊富な食物繊維があり、それが腸の中でコレステロールや中性脂肪をからめとって、体外へ運びだしてくれます。その繊維の摂取が減ることによって、動脈硬化などの危険性がいっそう大きくなるのです。

そのうえ歯のない人が口にしやすいやわらかい食べ物には、乳製品のように脂肪やコレステロールをたっぷり含んだ食品が多いのです。

コレステロールをとり過ぎると、血管の老化である動脈硬化を促進し、脳梗塞や脳溢血の原因となります。入れ歯を用いないお年寄りに、寝たきりが多かったのも偶然ではありません。

 

●ガンのリスクが増す

「え。歯がないとガンになるの?」

と驚かれるかもしれませんが、歯を失くしたまま、咀嚼力の乏しい口で食べていると、ガンになりやすいと考えられています。

いくつか理由がありますが、ひとつは栄養の偏りです。緑黄色野菜のビタミンEやβカロチンにはがん予防の効果がありますが、歯が悪いと野菜が苦手になるので、それらが不足しやすいのです。このところ急増している大腸ガンは、食物繊維がいちばんの予防策といわれていますが、その食物繊維もとりにくくなります。

また、咀嚼力が低下すると、あまり噛まなくなるため、一般に唾液の分泌量が少なくなるのですが、これがもう一つの理由です。

実は唾液に含まれる酵素には発がん性を和らげる働きがあります。たとえば、ガンに結び付く危ない食べ物として、昔から知られている魚のコゲ。それを30秒間、唾液に浸しておくと、危険性が90%近く減ります。タバコとガンの関係が問題になっていますが、ヤニの発がん性も約4分の1になるのです。

ガンを予防する健康食品がブームになっているようですが、私たちの体には、唾液という素晴らしいガン予防薬が備わっているのです。

ガンの80%は、食べ物などに含まれる発ガン性物質が原因といわれます。いい入れ歯でゆっくり、たくさん噛むと、唾液と食べ物とがよく混じりあい、添加物などの発ガン性が消えてガンを予防してくれるのです。

 

●肥満・糖尿病の危険もある

歯が少なくなると、そのぶんゆっくり噛むようになると考えますが、実際はその逆です。すでに何本か歯を失い、入れ歯を考えている人は、ゆっくり噛んでいるのでしょうか。まだ歯が丈夫で、みなそろっていたころよりも、"早食い"になっているのではないでしょうか。

当たり前のことですが、欠損歯があると上手に噛めなくなります。片側だけで噛んだり、欠けた部分を避けながら噛まなければなりません。面倒くさいですね。ですから自然と、よく噛まずに飲み込む早食いになってしまう人が多いのです。

食べはじめから満腹感をおぼえるまでにかかる時間は、食べ方が早くてもゆっくりでも、実はあまり変わりありません。早食いが肥満や糖尿病のもとといわれるのは、そのためです。食事開始から30分後にお腹が満たされるころ、ゆっくり食べる人がご飯1杯でも、早食いの人はも3杯目をたいらげていたりします。

早食いは大食いになりやすく、肥満につながります。ですからダイエットの基本もしっかり噛んで、ゆっくり食べることです。

また、短時間で一気に食べると摂取したカロリーは同じでも、ゆっくり食べたときより血糖値が高くなり、糖尿病の原因になります。

歯の悪い人の場合に肥満や糖尿病の危険性が増すのは、"しっかり""ゆっくり"が、どうしても難しくなるからです。しっかり噛めるいい入れ歯は、肥満や糖尿病を予防し、悪化を防ぐことにもなるのです。

 

●唾液の分泌量が少なくなる

歯がなくなって咀嚼力が低下し、噛む回数が減ると、もう一つ多くな悪影響が出てきます。先に述べたように、唾液が少なくなってしまうのです。

発ガン物質の毒性を抑える働きがあるといいましたが、唾液にはさまざまな酵素やホルモンが含まれていて、じつに多種多様な役目を果たしています。

  • 消化を助ける
  • 発ガン物質の害を少なくする
  • 筋肉や骨を丈夫にして老化を防ぐ
  • 抗菌作用があり感染症を予防する
  • むし歯や歯周病を予防する

このような唾液の隠れた働きはあまり知られていませんが、私たちの健康は唾液に負うところが少なくないのです。

しかし歯のないままにしておくと、しだいに噛まないで食べる習慣がつき、唾液というせっかくの"すぐれもの"も十分な働きができません。

とくにお年寄りの場合、生理機能の衰えから、若いころより唾液の分泌量が減少しています。しっかり噛むことがますます大切になりますが、噛む力が低下していてはそれもままなりません。そこで入れ歯によって噛む力を蘇らせ、しっかり食べて、どんどん唾液を出すことが必要なのです。