保険治療と自費治療との違いは
コンビニより多いといわれる歯科診療所の数は全国約6万8000軒にも上り、その治療のレベルは、千差萬別。地元ではなく地域外にかかりつけ歯科医を持つひとも多いですね。一般の患者さんにとっては”いい歯医者”の見極めはとても難しいと思われます。
新幹線に乗ってでも信頼できる歯科医にかかりたいという人の気持ちもわかります。歯科には皆さんよくご存じのように保険診療と自費診療があり、メリット・デメリット・費用負担などなかなか分かりにくいのが現状ではないでしょうか。保険が適用される保険診療は治療費がある程度に抑えることが出来ます。しかし診療内容や状態によっては保険適用外で高い費用が掛かっても、自由診療を選んだ方が長い目て見て得策であることも多いです。
保険診療では、材料や施術方法が、決められていて日本中どこへ行っても同じ材料同じ方法で行われます。違うのは、かける時間くらいです。平均的で安心安全ではあります。一方、自由診療の場合は、自由と言うだけあって自由度が広く、治療法や使える歯科材料もなんでも自由です。かかっている歯科医院の持つ技術と材料を際限なく注ぎ込むことも出来ます。当然得られる結果は、高いレベルであるため、その後のQOL(生活の質)の向上につながることは間違いありません。
ただ自由診療は、かかる歯科によって行っている治療法が様々で何が本当に良いものか悪いものか、判断するのは難しですね。
まず情報を得るために、それぞれの歯科医院のホームページで受けられる治療やその詳細が公開されているので、これを確認してから良いと思われる歯科に行くのが良いのではと思われます。この際、掛かる費用のチェックも重要です。保険点数により明確に金額が設定されている保険診療と違い、自由診療は医院それぞれが独自に金額を決められるため千差萬別、ピンキリと言えます。都心なのか郊外なのか、地域によって相場が異なるケースも多いので、同じ治療でも必ず周辺歯科の価格相場も見ておくとよいでしょう。
またかかる歯科の設備も良くチェックすることも重要です。例えば歯科用コーンビームCTを完備しているか、むし歯治療では、低侵襲治療に欠かせないマイクロスコープや虫歯の超音波診断と言った最新設備を持っているか、歯型を採りを口腔内デジタルスキャナーと呼ばれるカメラで光学印象でやっているかなどが最新の治療設備です。
自由診療を選ぶべき代表例が、むし歯治療のかぶせ物。保険診療で比較的安価に装着できるいわゆる銀歯と言われる金属のかぶせ物は、金属も貴金属(金、銀、パラジウム)で出来ているにも関わらず実は多くの歯科医が「歯を一生守りぬくには不十分」と警笛を鳴らすものです。耐用年数が、平均7~8年と短く、単純に考えると一生に7~8回再治療を要することになります。素材の変形やさびや腐食よるリスクがあるため、いくら完璧な治療を行ったとしても半永久的に持つものではありません。
装着したものを長くもたせるには、セラミックやジルコニアといった生体親和性のよい、汚れや細菌を寄せ付けにくい静電気の起こらない表面が滑沢で安定した材料を使用することが出来る自由診療に切り替える必要があるでしょう。選び方にもコツがあり、前歯、奥歯によって最適な素材は異なりますが、中には、色味は選べませんが、価格が安いといった費用対効果の高い材料もあります。
我々歯科医が1989年から展開し取り組んで来たてきた「8020運動」と呼ばれる歯の病気の予防行動が、成果を見せたおかげか?80歳でも歯がたくさん残っているお年寄りが増えたために、総入れ歯の患者さんは、少なくなりましたしインプラントも普及しましたが、まだまだ、部分入れ歯の需要は、あると思われます。
部分入れ歯には、保険適用のレジン床義歯と適用外の金属床義歯がありますが、自由診療の一つの金属床義歯は、レジン床よりは、明らかに優位と言えます。部分入れ歯に一番大事な要件は、義歯は、たわまないことです。義歯に弾力性がありぐにゃぐにゃだと義歯がたわみ、たわめばたわむほどに残って支えている歯が揺らされることになります。歯に揺らされる力が掛かり続けると終いに歯が抜け落ちることになります。揺れない入れ歯を入れていることで、歯の揺れも収めることが出来、歯が長持ちする結果につながります。揺れない入れ歯を作るには、強い材料の使用が求められます。自由診療に使われるコバルトクロム合金や白金加金は、強度が強く、そのため薄く仕上げることも可能なので、装着感も良く、歯を揺らせることも少ないため、歯も長く抜けずにもってくれるため、入れ歯を作り変える必要なく経過する可能性が高いため長期の経過を考えると第一選択に考えるべきものです。保険適用のものと比べると費用は、10倍以上になるため、どうしても費用負担の少ない保険適用のレジン床義歯を選択されるケースが多いです。費用対効果を考えると金属床義歯を選択されるのが得策と思われます。
自費診療で良く知られているのが歯並びをよくする「矯正治療」です。
歯並びが悪いと、歯磨きがしにくいことに代表される多くのリスクが、ありますので、そのリスクを回避できることにつながるため、多くの費用がかかっても小中学生から20代前半までの早い時期に治療を受けることが得策と考えられます。
それでは、歯並びが悪いと、どのようなリスクがあるのでしょうか。以下に上げてみましょう。
1.虫歯や歯周病にかかりやすい
ガタガタの歯並びでは、歯磨きが複雑で難しくなり、磨き残しが多くなってしまいます。磨き残しの‘‘歯垢‘‘が原因となり、虫歯や歯肉炎、歯周病を引き起こしてしまうことになります。
歯並びが整うことは、虫歯や歯周病から予防することにも繋がるのです。
口腔内細菌が関わる全身疾患には糖尿病、早産による低体重児出産、誤嚥性肺炎、動脈硬化による心筋梗塞や脳梗塞 などがあります。
2.見た目がコンプレックスになる
歯並びや口元の見た目が悪いとコンプレックスになってしまいます。
お子様の場合、小学生くらいまでは、あまり気にならないかもしれませんが、大人に近づくに従い、容姿が気になってくるものです。
歯並びが気になっていると、人と会話するのが億劫になってしまったり、思いきり笑うことができなくなっていきます。
そうなると、自信が持てず、なかなか社交的にもなれません。口元が整い美しくなることで、自信をもって、積極的にコミュニケーションをとれるように変化します。
3.骨格や顎関節への影響
①骨格への影響
上と下の歯をかみ合わせた時に、すべての歯が同時にあたる状態が理想ですが、一部の歯が正しい位置に生えていない状態であると、そこ場所が最初に当たってしまうことがあります。
そのような歯並びの場合には、その歯が当たらないように回避して咬み合わせるようになります。その状態を長く続けると、本来の正しい咬み合わせではなく、ズレがあるため、顎やお顔が歪んでしまう原因にもなります。
成長期の子供の骨格は、大人よりも大きな影響を受けやすくなります。正しい歯並びと咬み合わせに改善することで、骨格を正しい成長方向に導くことができまた出来てしまったゆがみを改善できるのです。
②顎関節症を誘発する
上記のように、悪い歯並びから咬み合わせが乱れ、正しく咬み合わせることができない状態が続くと、顎の関節に常に負担をかけてしまいます。
その結果、顎関節症を誘発することにつながります。
顎関節症は、お口が開けにくくなったり、痛みがでたり、開閉時に音が鳴るような症状を持つよく見られる病気ですが、放置すると生活に支障をきたすこともあります。
4.しっかり噛めない
歯並びが悪いと、本来咬み合わせることができる上と下の歯で「噛む」ということができません。
しかし、ほとんどの場合、現状の悪い歯並びや咬み合わせに慣れてしまっていて、「噛めない」という意識をもたれていることはありません。
そのような方は、噛めていないことで気付かないうちに消化器官に負担をかけてしまっているかもしれません。
体への負担を減らし、全身の健康を守るためにも、正しい歯並びと咬み合わせは非常に重要です。
従来のワイヤー矯正に対して、ここ数年で一気に頭角を現し一般化たのがマウスピース矯正です。いえさき歯科でも扱っているインビザラインに代表されるものですが、口腔内スキャナによる3DスキャンとAIによる矯正計画を基に、カスタムメイドのマウスピースを作製し、約1週間ごとに自分で交換をすることで、治療が進みます。作成した枚数のマウスピースを交換が終わると治療が終了します。
以上、自費治療と保険治療の違いや、メリットデメリットについて述べてきましたが、治療法の選択は、主治医とよく相談して、長い目で見てよく考えて決められることをお勧めします。