どう治す?顎関節症
「口を開けたときに音がする」「痛みがある」「口が開かない」というのは顎関節症の典型的な症状ですが、症状により重症度も違えば、患者さんにしてもらいたいことや歯科医院で行う治療も異なります。顎関節症は患者さん自身が治していく面もあるとはいえ、歯医者さんと相談して治療を進めていくのが安心ですよ。
1.「音がする」タイプ
口を開けた時に「音がする」というのは典型的な顎関節症の症状ですが、一番軽度の症状ですので、過度に心配される必要はありません。また、とくに治療の必要はありません。
ただし、「痛みがある」「口が開かない」といった症状が出はじめたら重症化しています。こうした症状が出てきたら、できるだけ早く歯科を受診してください。
2.「痛みがある」タイプ
「口を開けたり噛みしめるといたみがある」、または「今まで音がするだけだったのが、痛むようになった」場合も、要注意信号が出ています。ですので、できるだけ早く歯科を受診してください。
音が大きくなった、小さくなったなどは関係ありません。
歯科では、痛みの原因が顎関節の内部にあるのか、顎関節を覆う筋肉にあるのかを判断してから、指導や治療を行います。
顎関節と筋肉、どちらが原因にしろ、まず患者さんにしていただくことは一つです。それは、安静を保つこと、「痛みが出るようなあごを動かさない」「痛いなら口を開けないで、無理はしないで」これが顎関節症の治療方針のひとつ、ゴールデンルールです。筋肉を傷めたら安静にしますよね、それと同じです。
安静にしていても痛みが引かなければ、原因ごとに違った治療を行います。
①痛みの原因が顎関節にある
安静にしていても痛みが引かないなら、鎮静剤を処方したり、あごの負担を減らすマウスピースをつくります。くわえて、顎関節の内部を注射で洗浄したり、内視鏡での手術を行うこともあります。(専門の病院で行います)
痛みの原因が筋肉にある
安静にしても痛みが引かないなら、鎮静剤を処方したり、スプリントと呼ばれるあごの負担を減らすマウスピースをつくります。マウスピースはおもに就寝中にし装着していただきます。
3.「口が開かない」タイプ
「大きく口を開けられない」、または「今まで音がするだけだったのが、口が開かなくなった」場合は、できるだけ早く歯科を受診してください。音が大きくなった、小さくなったなどは関係ありません。「口が開かない」タイプの場合、ほぼ顎関節の内部に問題が起きています。
口を開けたときに音がする人がやってはいけないのは、気になるからとカクカク音を鳴らすこと。普通に食べているときのあごの運動は生理的な咀嚼という運動です。でも鳴らすというのは鳴らすことが目的ですから、顎関節の動きは必ずしも食べるときの運動と同じではありません。そのいびつな動きは、さらに関節円板のぞれをまねくなど、悪い影響をもたらします。柔軟体操にはなりません。
顎関節も筋肉と同じように、鍛えたら強くなると思っている方がいます。でもこれは大きな間違いです。無理して硬いもの(スルメやジャーキーなど)を噛んでも、成長期が終わった人は影響はありません。むしろ顎関節を傷めてしまいます。たとえ成長期の人であっても、過度の負担をかけるのはよくありません。
②施術や開口訓練をします
顎関節では、上顎骨と下顎骨のあいだに「関節円板」という平べったい組織があります。口を開いて、下顎骨が動くときにこの組織がクッションのような役割を果たすおかげで、私たちはスムーズに口の開閉ができます。しかしこれが何かの拍子にズレて顎の動きを阻害するようになると、口が開かなくなります。イメージとしては、歯車がずれて回らなくなってしまったというのが近いですね。
生活習慣と顎関節症の関係
ⅰスマホやパソコンを見るときに、下をむいたり、前傾姿勢や猫背になっていませんか。また、頬づえやうつぶせ寝の癖はありませんか。これらは顎関節への負担となります。
ⅱ部活動や趣味で長時間バイオリン(おごで楽器を支える)や吹奏楽器を演奏されている方も、顎関節症になりやすいです。
ⅲものを食べていないときは、上下の歯のあいだはわずかに開いているのがふつうです。しかい無意識に上下の歯を噛み合わせることがクセになっているかたもいます。これはツースコンタクトはビット(TCH)とい呼ばれます。
ⅳ改善にはご自身にTCHがあるのを認識することが第一歩、上下の歯が当たっていることにきづいたら、意識的に離すようにしましょう。
ⅴ睡眠中の歯ぎしりや噛みしめは、顎関節症の大きな原因です。朝起きると顎がだるい日が続く、歯がすり減ってきたというのは、典型的な歯ぎしりや噛みしめの症状です。
ⅵ歯のすり減りをはじめ、舌が歯の形にへこむなど、睡眠時の歯ぎしりの影響は口の中に顕著に現れます。歯医者さんからの指摘で気づく方もいます。歯ぎしりは、歯医者さんでつくってもらったマウスピースを睡眠中に装着すると、緩和されることがあります。
変えられるものから変えていこう!
うつぶせ寝や睡眠中のはぎしり、TCHの習慣は、そうそう変えられるものではありません。顎関節によくないからといって、「部活動や趣味をやめよう」ともいきません。ですので、「自覚しやすい・変えようと思って変えられる要因」から変えていきましょう。
意識して変えることが可能な要因のひとつが、「スマホ」です。顎関節に悪い姿勢(前傾姿勢や猫背)でスマホを見ていて、しかもそれが長時間続くというのは、顎関節症の大きなリスとなります。ただし、「スマホを使うのをやめよう」ということではありません。いまはスマホのない生活は不可能ですので、見るときの姿勢の改善や、15分~30分ごとにインターバルを置くなどを意識してもらえればと思います。
顎関節症についてのQ&A
Q.「音がする」だけなら治療は必要ないそうですが、本当にそれでいいの?
A.たとえば膝の関節ですと、屈伸したときに正常な人は痛くないし、音もしません。ですが、ときどきパキッと音がする人がいます。その人に対して「今すぐ整形外科に行って見てもらわないと、膝の手術を受けないと!」とはならないですよね。確かに音は聞こえるし気になるかもしれないけれど、あごの関節も同じで、音はするけど痛みはなく、しっかり伸びたり縮んだりするならそれは「ふつう」です。
Q.顎関節症になりやすい人となりにくい人がいるのはなぜ?
A.顎関節症が発症するかどうかは、その人の顎関節の"強さ"と顎関節に悪い習慣をどれくらい持っているがで変わります。その人が耐えられる許容量をコップになぞらえた「コップ理論」で説明しますと、人はそれぞれ、症状がでるまでには許容量があります。そこに顎関節に悪い習慣という"水"が注がれていき、限界を超えて水があふれると、「顎関節症の発症」となります。顎関節に悪い習慣が多いほど、注がれる水の量は増えます。
Q.マスクと顎関節症って関係ある?
A.マスクの圧迫が顎関節にダメージを与えると考える人もいますが、マスクが直接、顎関節症を起こすことはありません。マスクが息苦しいからと、あごを変なふうにずらして息を吸う習慣が顎関節への負担になったり、口を大きく開ける機会が減ったことで、重症化するまで顎関節症の症状に気づかなかったということは考えられます。
どうでしたか。顎関節症の症状や治療について少しは、お役に立ちましたか?
顎に症状があり、顎関節症かなと思ったら、いつでもお気軽にご相談ください。
この記事のお問合せ先:阿倍野区西田辺のいえさき歯科
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