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口腔機能低下症って何?

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「口腔機能低下症」という言葉を聞いたことがありますか?

今のところまだあまりなじみがない言葉かもしれません。「この頃ちょっと食べ物が飲み込みにくくなった」「口の中が乾きやすくなった」といったようなことが、思い当たる方は、もうすでに口腔機能低下症かもしれません。口腔機能低下症は、65歳以上の方に適用される病名でしたが、今年の4月より適用年齢が50歳に引き下げられました。まだ若いと思っていても口腔機能が低下している人が、多いためそうなったのでしょう。

上に上げた身近な症状が、まさに「口腔機能低下症」に含まれるものです。この機会に今一つよくわからない口腔機能低下症について、わかりやすく解説させて頂きます。

 

どんな症状がでるのでしょうか?

口腔機能低下症は、いったいどんな病気なのでしょうか?症状はどんなでしょうか?一ことで「口腔機能低下症」といっても、いろんな症状があります。以前と比べて、

「食べ物が噛みにくい」「食べ物が口に残ってしまう」「食事中むせやすい」「錠剤が飲みにくい」「口が乾く」「滑舌が悪くなった」「硬いものが食べにくい」「食事に時間がかかる」

といった症状が、口腔機能低下症に見られる主な症状です。案外身近で、よくある症状のようにも感じられることでしょう。こうした症状からわかるとおり、「口腔機能低下症」とは、口の持つ様々な機能が低下する病気として名づけられました。口腔機能低下症は私たち誰もがいつなるかわからないものなのです。また、口腔機能低下症は、具体的な強い症状のことのみを指すものではありません。特徴的な症状は一見バラバラなものに見えますが、多項目から判断して口の中の機能が下がってしまっている状態にあることをトータルにとらえ、それらがある水準を下回るものを「口腔機能低下症」と言うのです。これまで「老化」の一言で語られていたものがより具体的にとらえられるようになりました。。

口腔機能低下症、2018年に初めて名づけられた新しい病名です。保険適用で診断・治療が可能です。未知の新たな病気のようにとられておられる方もおられるかもしれませんが、そうではなく、広く多くの方に生じている口の中の機能低下を具体的な病気として捉えるようになったものだとご理解ください。

 

 

口腔機能低下症になる原因ってなに?

図1.口腔機能低下症の概念図

出典:日本歯科医学会 2018 口腔機能低下症に関する基本的な考え方

 

 

口腔機能低下症を引き起こす原因は、何でしょう。症状もバラエティーに富んでいるため、原因もいろいろと考えられます。いちばんの原因は「加齢」です。年齢を重ねると、

口の中の「感覚」や「咀嚼」「飲み込み」「唾液の分泌」などが徐々に低下してきます。

そうしたひとつひとつが、口腔機能低下症の症状を起こしていきます。当然歯の病気を放置して、虫歯や歯周病などで歯を失ったり、義歯が合っていなかったり、といったことも症状の原因になっていきます。日ごろの歯みがきなどのセルフケアを怠っていると、口の中の環境が悪くなって行きます。全身に起こる病気によっても口の中の機能は低下しやすくなります。それ以外にも、病気の治療のために投与された薬の副作用や、栄養が行き届かない状態なども関係してきます。
つまり口の中の機能低下は、さまざまな要因が複合的に絡んで、生活全体、自分の体調や健康管理などのケアと、口腔機能へのケアは密接に結びついているのです。

口腔機能低下症が進むとどうなるのでしょうか。

口腔機能低下症って、ただ口の中が乾きやすくなっただけでしょ、とか、滑舌が悪くなっただけでしょ、などと思っていませんか?口の中の機能が低下することを、決して軽く見てはいけません。

口腔機能低下症が進行すると、全身的な健康に大きく影響を及ぼします。そのままにしておくと、食べることが楽しくなくなり、外出も楽しくなくなって人との交流も減り、ますます外出しなくなってしまいます。歯が悪いと、噛み応えのあるものを食べるのが苦手になり、柔らかい食べ物ばかり摂る様になります。柔らかい食べ物は炭水化物を多く含んでいることが多いです。タンパク質を多く含む肉など硬い食べ物を食べなくなり、そのおかげで筋肉量が減り、体力も弱っていきます。筋肉が落ちると日常的な動作にも支障をきたし、歩いたり、階段を上るのが辛くなり、外出もさらに減ることにつながります。このように、お口が弱ってくることをオーラルフレイルと呼び、全身が弱ってくることすなわちフレイルに直結し、しいては日常生活に支障をきたすことにつながっていくことになるのです。口腔機能低下症が進行してしまうと、もはや元に戻ることはできなくなります。口腔機能低下症は気が付かないうちに進行しまっているのです。症状のある方は勿論ですが、50歳以上不安を感じたたら定期的な検査をして早め早めのケアをお薦めします。

ちょっとでも気になるようなら、歯医者さんで検査を受けよう

少しでも口の弱りを感じたら、ぜひ歯科医院で検査を受けましょう。口腔機能低下症の症状は多岐にわたります。お口全体の機能を調べ、検査も様々な項目で確認していきます。どんなことをするのか、簡単にご紹介しますね。

保険診療上は、7種類の検査を行うことになっています。

まずは口の中の衛生状態をチェック。「舌苔」とよばれる、舌の表面からはがれた垢の付いている量を測ります。
次は、口の中がどれくらい乾燥しているのかをチェックするため、唾液の量を測定します。3つ目は、咬合力の検査。4つ目は、舌や口唇の運動機能を調べます。さらに、舌圧と呼ばれる、舌と上あごとの間に作られる圧力を測ります。これが低下すると食べ物を舌でうまく送り込めなくなるからです。6つ目は、咀嚼機能の検査。べ物が上手に噛めているかを調べます。そして最後に、飲み込みの検査。うまく食べ物を飲み込めるか、飲み込みに時間がかかっていないかどうかを調べます。これら7つの検査のうち3つ以上に問題があるようであれば、口腔機能が低下している、という診断になります。

口腔機能低下を食い止める作戦を、歯科医師と一緒に考えていきましょう。詳しく調べることによってケアすべきポイントが明確になれば、歯の治療だけでなく、食事の際の食べ物の選定や食事の仕方、食べる際の道具の選択法など、食べること全体を考えた栄養指導、生活指導が可能になります。また運動指導も大切になってきます。歯科だけでフォローしきれないところは、管理栄養士や理学療法士、医師、介護支援専門員などと連携をとりながら進めて行くことになります。まずは歯科を入り口にして、お口の機能低下をしっかりと防ぎ、回復を目指していきましょう。