具合の悪い「入れ歯」をあきらめていませんか②
痛くない・落ちない・しゃべりやすい・よく噛める
固いせんべいなどのカケラが、入れ歯の下に入ってしまったときの激しい痛みのつらさは、経験した人でないとわからないようです。
具合の悪い入れ歯のキーワードが、"痛い""落ちる""しゃべれない""噛めない"の4つです。これから入れ歯をつくる人は、「まさかこんなことになるなんで」と信じられないかもしれませんが、そういう悩みはけっこう多いです。
具合のよくない入れ歯は、どこが悪いのでしょう?
せっかく入れ歯にしたのに、具合の悪い入れ歯ではたまりませんね。歯科医の悪口を言いたくなる気持ちもわかります。「また作っても同じようなものだったらどうしよう」というこの患者さんの不安も、当然でしょう。
具合の悪い原因を説明しだしたら、このコラムではとても書き足りません。また、難しくて複雑すぎて、とても読んでいただけないでしょう。
ここでは、一番よくみられる原因を簡単に挙げたいと思います。みなさんがいま持っている入れ歯に不安があれば、一度チェックしてみてください。
(痛い原因)
入れ歯が小さすぎる
噛み合わせたときに入れ歯ががたつく
入れ歯が歯茎に沿っておらず、部分的に圧が掛りすぎている
強く噛むと歯肉が圧迫される
入れ歯を安定させる床が大きすぎるか、形が不適切で歯肉に当たる
(落ちる/外れやすい)
プラスチックと歯肉のあいだにすき間がある
プラスチックの面積が大きすぎて、口の中の筋肉の動きに影響される
(しゃべれない/発音が不明瞭)
プラスチックが厚すぎたりおおきすぎて、舌の動くスペースが足りない
上下の歯の噛みあう位置が低すぎるか高すぎる
(噛めない/噛みにくい)
プラスチックが大きすぎて噛むのを邪魔している
上下の歯の噛みあう位置が高すぎる
入れ歯の吸着力が弱く、ピッタリ安定しない
しっかり噛める入れ歯が理想ですよね・・・
「痛い、噛めない、しゃべれないなんてひどい。信頼して治療を受けているのに、そんな入れ歯をつくって歯科医は平気なのか」
サイトをご覧のみなさんから、そういうお叱りを受けてもおかしくないですが、もちろん私たち歯科医は、患者さんにいちばんフィットする入れ歯づくりを心がけています。
しかし技術の未熟や思いやりの不足から、不完全な入れ歯をつくってしまう歯科医がいることも、残念ながら否定はできません。
入れ歯作りは、我々歯科医にとってかなり難しい部類の治療です。歯や顎の状態が悪く、治療の条件がむずかしいほど、高度な治療技術が必要になってきます。その意味では、「いい入れ歯」づくりは、すぐれた技術を持った「いい歯科医」にかかることからはじまります。
けれど合わない入れ歯、具合の悪い入れ歯は、すべて歯科医に責任があるというと、必ずしもそうとばかりはいえません。
口の中の衛生状態が悪いことで起こる歯周病などで、顎の骨が細くなったり、噛み合わせのバランスが狂ってしまうと、それまでフィットしていた入れ歯も、だんだん合わなくなってきます。
ですから、入れ歯の人でも、歯や骨を丈夫にするよう必要な栄養をとり、自前の歯が残っているなら、歯磨きも大切です。患者さんの口が変化して、"痛い""噛めない""落ちる""しゃべれない"などの不都合が出てくることも珍しくないのです。
いま使っている入れ歯が、あなたの口にピッタリ合った「いい入れ歯」かどうかを見分ける目安として用いられるのが「咀嚼能力判定表」です。
歯科医がカウンセリングで利用することの多い山本式総義歯咀嚼能率判定表ですが、5点以上ならまずまずの合格点。アワビやピーナッツも噛める6点以上であれば、あなたの入れ歯は今のところ申し分ありません。
4点以下なら、一度、歯科医に相談してみてください。