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噛み合わせ不良が全身の歪みを起こす

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当院を訪れる患者さんには歯のほかにも、体の不調や病気をかかえる人がすくなくありません。そうした不調や病気が、歯の治療で治ってしまう。歯と全身疾患の明確な因果関係は、不明ではありますが、そんなこともあるのです。

最近になって、この事実に注目した厚生省が研究プロジェクトをスタートし、「咬合状態に起因する多臓器の異常」をテーマに研究が進められています。

噛み合わせが悪いと、他の臓器に影響が現れることは、長年たくさんの患者さんをみている歯医者には、昔からよく知られていたことです。

「歯が無くなって全然噛めません」

といってやって来られたYさん。78歳であれば悪い歯があっても仕方ないと思いながら口の中を見てびっくりしました。むし歯を治療したあとの金属がたくさんあって、抜けたところはブリッジあや入れでうめられています。口のなかはギンギラ銀です。

しかし驚かされたのは、その銀ギラのにぎやかさではありません。歯がすり減ったり、ブリッジが外れたり、入れ歯がカタカタしていたりして噛み合わせが惨憺たる状態になっていたのです。しっかり噛み合っているのは、前と奥の2か所しかない。こんな状態では、噛めないのは当然かもしれません。

「もしかしたら、腰が痛くありませんか?」

「えっ。たしかに腰痛で困っていますけど、どうしてわかるんですか」

「歯を見れば、判りますよ!」

もちろん、歯だけ見てるわけではありません。じつは診療台に座られるとき、Yさんが腰をかばっている姿をチラッと目撃したのです。

「ひょっとすると、その腰痛は歯が原因かもしれませんよ」

1年ほど前からひどく痛み出し、整体や針でも治らなかったという腰痛の原因が、まさか歯にあろうとは、Yさんも考えなかったでしょう。

怪訝な顔をしていたSさんですが、噛み合わせから腰痛が起こることもあるのだと、身をもって知ることになりました。そのあとかみ合わせを考慮して丁寧に入れ歯をつくりなおした結果、噛み合わせが改善し、そのあと知らない内にガンコだった腰痛が治ってしまったと報告を受けました。

 

頭痛・肩こり・腰痛など様々な不調が出ることも!

頭痛や肩こりなども、意外と歯や入れ歯が原因になっているかもしれません。たとえば、歯を治療してほんの少し(0.2mmくらい)低い目に被せが入り、噛み合わせを変化させるだけで、肩こりやめまいなどの影響がすぐ出てくることがあります。私たちの顎は、精密機器のように敏感で、それが少しづつ全身に波及していきます。頭や首や肩は、顎に近いですから、すぐに症状が現れる部位かもしれません。

頭痛と肩こり:噛み合わせの悪いところがあると、その状態を受けいれ適応するために、顎をズラして噛むようになります。食べるときだけではありません。噛み合わせの悪いところを、専門用語では早期接触とか咬頭干渉といいますが、その当たりや干渉を嫌って、顎はズラした状態を保つようになるのです。ですからひどい人になると、口を中心にして顔がゆがんで左右対称になっています。よく見ないと判らないレベルなので本人がなかなか気づくものではありません。こういう状態が続くと顎や首、頭の筋肉にそれが波及してストレスがかかり、頭痛や肩こりの原因になります。顔の筋肉も不自然な状態で緊張していますから、目の下や頬がピクピクするなどのチック症状もでることがあります。

ねこ背:奥歯のない人は顎が後ろに下がり、顎が引けることで首が前に傾きねこ背になりやすいのをご存知でしょうか。方はいわゆる巻き肩となっています。また入れ歯の噛み合わせが低すぎるときは、顎が前にずれます。なぜかというと歯の高さが足りないと、それを補うために自然と顎が前へでます。しかしそのままでは首と背中の筋肉が張ります。そこで背中を丸くし、筋肉をラクにしようとするのです。試しにやってみるとよくわかります。お年寄りに多い顎を突き出して背骨を丸めた、あの姿勢に必ずなるはずです。

腰痛とひざの痛み:つまり私たちの体はどこか1か所バランスが崩れると、その影響が全身のバランスに及ぶのです。不正咬合では、その位置によって、前後左右に背骨が曲がり、姿勢が崩れてきます。そういう歪んだ上体を支えているのは腰。腰の筋肉にストレスがたまって、痛みを感じるようになるのです。ひどくなると脊髄から出る神経が圧迫され、ぎっくり腰のようなひどい痛みがでてきます。背骨や腰に歪みがあっても、人間は立って歩かなければなりません。それを支えるのは脚ですが、まずダメージを受けるのは一番弱い膝の関節です。高齢者は脚腰が弱ってきますから、とくに注意が必要です。

顎関節症:顎関節症とは、「口が開かない」「顎を動かすと痛い」「動かすたびに関節がガクンとかジャリジャリと鳴る」という3つの症状の一つでもあればそう診断されます。むし歯、歯周病と並んで歯科の三大疾患といわれています。口が開けられなくなり、仕事が続けられず、退職したという若い患者さんがいましたが、生活にも大きな支障をきたすこともあります。今のところ原因は不明ですが、精神的ストレスによる顎の筋肉の疲労や、骨の異常などのほか、噛み合わせの悪さとの関連性が指摘されています。

治りにくい慢性病の原因になることも・・・

歯と慢性病の関係は、ギリシャ時代から指摘されてきました。ギリシャの哲学者アリストテレスは、生理不順などの婦人科病に悩む女性の歯は噛み合わせが悪いことに気づきました。さすがに哲学者は目の付け所が違うという感じですが、今日でも不正咬合の治療が生理不順を改善したという報告があります。

またヒステリーやリウマチも、昔から歯との関係がとりざたされてきた病気です。2000年ほど前には、歯を抜くヒステリー治療も行われていました。

これらを一概に迷信と片づけることはできません。というのも、噛み合わせは全身のバランスと深くつながっているからです。私たちの体を調節している自律神経やホルモンもどこかの臓器の働きではなく、全身の状態と密接に関連しています。

この分野は研究がはじまったばかりで、まだはっきりした因果関係がつかめていないものが多いのですが、先に紹介した厚生省の「咬合状態の起因する他臓器の異常」でも、神経やホルモンはもちろん、免疫力と歯の関係も取り上げられています。

噛み合わせの悪さが影響するらしいと考えられている病気や体の不調には、次のようなものがあります。

自律神経失調症、神経痛、リウマチ、生理不順、めまい、高血圧、心臓病、痴呆症、アトピー性皮膚炎、視力の衰え、中耳炎などなどこれから研究が続けられ解明が進むことを期待します。